※この連載に出てくる田んぼについて——2016年以降は現在の田んぼです。2013、2014年の田んぼと2015年の田んぼは、それぞれ異なります。
耕作放棄地を水田に戻すまでの大まかな作業は以下の通りです。
・草刈り
・水路探し
・水路の確立
・畦の修復
・水を入れて様子を見る
生きていた水路
2016年3月。開墾の草刈りと並行して、最初にやったのが水路探しです。数年来の放棄地ですから、水路は枝葉や土砂で塞がれ、一見どこにも見当たりません。
水路を確認するため、水路に沿って草刈り、
水のながれを見る水路をたどっていくと、使い物にならないかと思っていたものが、
どうやら活きているとわかった。
水路掃除をする
(blog 着土「四 水路探し」2016年3月25日)
田んぼだった場所には、以前ここで作っていた人の仕事が残っています。
パズルのピースが1つわかれば進めるように、これが再生への始まりです。
いろいろ練り歩いていると、草の下から前の持ち主が施した「水路」を発見する。
2箇所確保できたので、草刈りと手直しで十分に機能するだろうと思う。
(blog 着土「七 水路」2016年3月31日)
我が家の田んぼは山水を使わさせていただいています。
山水は幅1mほどの小さな川になり、そこから分岐して田んぼへと繋がっています。
川に作る堰も、大げさな工事は要りません。
石でせき止めてみた
完全には止められないが
十分に機能している
(blog 着土「七 水路」2016年3月31日)
下流で水を使う人のことも考えると、むしろ完全に止めない方が良いです。
田んぼを通って川に戻る流れであれば良いのですが、そうでない場合は
・夜間だけ田んぼに水が入るようにする
・水路は完全に塞がず、半分開けておく
といった、下流への配慮が絶対に必要です。
また、水を堰き止める際に堆肥の空袋やビニール袋は使いません。台風後の増水時に流されゴミになりがちなので。
道具
・角スコップ
水路の確立は少々骨が折れたようです。当時のblog記事が物語っています。
まだ水路を確立できていない
何年ほったらかしになっていたのだろう
徐々に自然に戻ったのだから、
徐々に人工物である田んぼにするしかない。
なんどもつぶやいて焦る気持ちを抑える
(blog 着土「五 水路確保」2016年3月30日)
水の一年——いつ入れて、いつ落とすか
水路が生き返ったら、あとは一年、水と付き合っていきます。わが家のカレンダーはこうです。
・冬季: 冬の間も水路の掃除と堰の確認を怠りません。冬のあいだも水を張ったままにする冬季湛水なので、水を「入れ始める」というより「切らさない」感覚です
・田植え前日(6月): いったん水を止め、うっすら水が残る程度にします(第7章)
・夏(7〜8月): 草取りと水の見回りの季節。出穂が始まると、いちばん水が必要になります
・出穂後35日ごろ(9月下旬): 止水
・出穂後45日ごろ(10月上旬): 稲刈り
・稲刈りが終わったら: また水を張り、冬季湛水へ。水の一年も循環します
落水時期を考えた2016年の記録を参考に取り上げてみます。
我が家の田んぼの出穂日は8/23
稲刈り10日前に止水(人によっては出穂後30日くらいで止め。)出穂後35日頃(9/26) 止水 仕事の都合上9/29に止水
出穂後45日頃(10/6) 稲刈り 10/9に稲刈り始め
(blog 着土「落水時期をいつにするか」2016年9月15日)
ちなみに2026年は、朝紫が8/3に出穂しました。
いつ水を落とすかは、やり方によって違います。同年、近所のおじさんに「落水せなあかん」と言われて、こう考えていました。
しかし、川口由一式では9月いっぱいくらいまでは注水。
岩澤信夫式でも手刈りの場合は直前まで水をはっていても良いとなっている。獣害との兼ね合いもあるが、岩澤式をできるだけ忠実におこなうことにする。
いや、一番下の田だけ落水しよう。*上は稲刈りまで深水維持
*下は落水
(blog 着土「久しぶりの無害」2016年9月14日)
大きく分けて、慣行農法と自然農法で異なります。
手刈りなら3日前まで深水でも刈れます。なんなら水をはったまま稲刈りする人もいます。
猪の被害にあっていた時期の考察があります。
予定日より早めたのは、ぬた場にされているのなら、ぬた場に適さない乾地にすれば良いのではないか?と思ったから。
(blog 着土「止水」2016年9月24日)
しかし、猪は乾いていても草むらがあればぬた打ち回ります。
9/21くらいから、止水を気にする。
「くらい」とつけるのが、森羅万象の風土がある土地柄である気がする。
(blog 着土「落水時期をいつにするか」2016年9月15日)
現在、私の田んぼは水不足で落水時期を考える必要もなく、勝手に水がなくなります。
毎日の水管理——朝、水が無かったら
水管理は、シンプルです。
田んぼの水口は下流にも半分行くように堰き止める。
朝夕、田んぼに水が入っているか確認する。それだけです。
水が欲しい時は、作業前に完全に堰をして、作業後には半分開ける。
そして、水が無かったら、順に見ていきます。
いまのわが家の見回り順は、水路→川→田んぼです。
①まず、水路——枝葉や土砂で詰まっていないか。
落ちた枝葉はもちろん、台風や豪雨のあとは特に土砂や草が流れ込み水路を塞ぎやすいです。水路に沿って歩けばすぐわかります。角スコップひとつあれば掃除できます。
②次に、川——水量と堰を見る。
田んぼの水路に来る前の、川そのものを見ます。川の水量が減っていたら原因を考えます。天候由来のものであれば祈るしかありません。
台風や豪雨のあとは堰が崩れていることもあります。
③そして、田んぼ——穴があいていないか。
モグラか?と思い確認してみると、猪が掘った穴からごうごうと水が抜けていた。
多分そのまま固い土までいき、一番下の田んぼまで直通したのだろう
(blog 着土「畦の修繕」2016年8月8日)
直しても直してもいたちごっこ。もぐらごっこだ。
(blog 着土「埋めても埋めてももぐら穴」2016年8月31日)
対策は、見回りとスコップです。
スコップを使って穴をつぶした
早々に水はたまりだした
(blog 着土「水不足対策」2016年8月10日)
穴を見つけたら、大小様々な石を詰めます。水が抜けなくなったら田んぼの土や畦土を被せます。
穴を掘る生き物はモグラ以外にも、ネズミ、オケラがいます。
小さな穴でも、水が通り始めるとだんだん周囲が削れ大きくなります。
ちなみに、なぜか2026年は穴を空けられなくなりました。
水不足で干からびたこと、気温が高くなったことで、これまでいた生き物が生きられなくなったのかもしれません。これは執筆時時点での憶測です。
足跡水路——水は歩いて呼ぶ
水路から田に水が入っても、田全体には簡単にまわりません。2014年、歩いて水を運ぶやり方にたどり着きました。
足跡で水路を作り、水を呼ぶ作業をおこないました。
(blog 稲作日記「水よ来い。」2014年5月4日)
土の上を歩く、水がついてくる。
闇雲に歩いても水はこれず。
一歩分踏んで水を呼んで、その間に畦を塗って、元に戻るとまた一歩分踏める。
(blog 稲作日記「水よ来い。」2014年5月4日)
このやり方は、2016年の田でも使いました。水のまわりが悪い田に、幹線と脇道を歩いて作ります。
水のまわりが良くなるように水路のようなものを走らせてみることにした
まずはメインストリートを3本。水口から端まで。
刈り払い機でざっと草を刈り、その後なんども歩いて水路をつくった
(中略)
メインストリートに水が落ち着き始めたら、
脇道を作り始めた
(blog 着土「水不足対策」2016年8月10日)
14年分の失敗と対策
失敗: ため池を深く掘りすぎた。
2014年の田は湧水が冷たすぎたので(第1章参照)、ため池で水を温めてから入れる方針にしました。ぼくは深く掘れば良いと考えて、掘りました。ちなみに現在は作っていません。
狭い面積で深く掘り、多く水を溜めれば良い。と考えていたのですが、
去年ゼロからため池を作った棚田のご主人から
「水深を深くしても結局表面しか温まらなかった」との助言。
しかも、粘土層まではぎ取って、小石がじゃらじゃらとでてくるまで掘ってしまった。
(blog 稲作日記「ため池づくり」2014年4月9日)
この年の考察と、翌年への設計はこうです。
ため池の効果をあまり感じ取れない。
来年は半分くらいの水深で、面積も半分でいい。
土でうねうねとした水路を作り、土部に里芋と生姜を植える。
水位を調整しやすいように、山側に水が渡る水路をつくる。
ため池から水路への排水溝は山側に作る。棚田は山側から谷川にかけて水深が深くなる。
(blog 稲作日記「来年のため池と水路考察」2014年5月22日)
その後、この棚田から別の棚田へと移り、溜池も作らず今に至ります。
低水温に耐性のある品種を栽培するようになったからです。
章末コラム: 私が雨雲になればいい
2015年の春、種おろしから2週間たっても、発芽は1〜2割。雨はまったく降りませんでした。
敷いてある草の下の温度は冷たかった。
相変わらず雨は降っていない発芽に必要な、水と温度が足りていないのではないか?
(blog 母は大地 父は空「二十二日目」2015年5月7日)
当時のブログの名前は「母は大地 父は空」でした。その日の記事は、こう続きます。
そうか、父は空、雨が降らないのであれば私が雨雲になればいい。
寒さに震えているのなら暖かい家を用意したらいい。さっそく大きなジョーロと不織布のマルチを買いにいった。
(blog 母は大地 父は空「二十二日目」2015年5月7日)
次章は「獣害——対策と受容」。色々試して一番効果を実感したものとは。
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