3mの茅の荒地から
2016年3月。ぼくは念願叶って徒歩圏内で数年は経っているであろう耕作放棄地を借りることができました。

近所を歩きまわって目をつけていた場所です。
最上流に位置し、周囲に農薬を使う田畑がない。
そこを借りられることになりました。
当時は茅が2m、高いものでは3mに育っていました。
いたるところに獣道があり、鹿の角も落ちている。イノシシが掘り返した跡で地面は所々深くぼこぼこ。
わずかに田んぼの面影が残っているような状態でした。
しかし、無理かも…と諦めの気持ちは微塵もありませんでした。
やっと始められる!
その嬉しさと喜びと楽しみしかありませんでした。
まずは草刈りをするところから、すべてが始まりました。
前提をひとつ。ここで書くのは、基盤整備されていない、昔ながらの田んぼの話です。
基盤整備された四角い田んぼを再生する場合は、状況が変わってきます。
それでも、状況に合わせて手入れするのが自然農だと思います。
あなたの田んぼに読み替えて、考え実践してください。
やり方——時期・道具・段取り
開墾作業は、田んぼ仕事の始まる4月中旬までに。
1. 草刈り
まずは草刈りをして全体像を掴みます。
圃場だけでなく外側も広めに刈ります。
そうすることで元々の田んぼの外観を把握することができます。
また、草や土に埋もれていた水路を見つけ出せます。
草を刈ることは、ヒトの住処と獣の住処の線引きにもなります。
潜み場が無くなるのでイノシシは近づかなくなります。
茅以上に厄介なのはホタルイです。
茅は根元で切って、水田にすれば消えていきますが、
ホタルイは湿地が好きなのか、切っただけではすぐに再生してしまいます。
スコップを使って根っこから取り除きます。
道具
開墾に使う道具は2つ
・刈払機
・スコップ
刈払機は
・23cc以上のガソリン駆動
・連結式ではないもの
をお勧めします
理由
放棄されていた土地を田んぼに戻すとなると、それなりにパワーがいります。
ナイロンコードも使用可能と明記されていると馬力は安心です。(開墾作業にナイロンコードは適さないので使いません。)
振り回すように勢いを付けて刈払機を使うので、持ち運びに便利な連結式では弱くて耐えられません。
開墾にかかる時間を短縮しようと思われたら尚更です。
ゆっくりぼちぼちと思っていても、いざやり始めると、ガーッと進めてしまうものです。
実際ぼくも、車に積みやすい連結式を使っていたら筒状の胴体部分が折れました。
また、ナイロンコードでの草刈りはしていません。
なぜなら仕組み上コードのゴミが出るからです。
そして、地肌を見せるような草刈りはそもそもしないからです。
以前は千切れたコードが土に分解される商品もありましたが、販売終了となり現在入手できません。
マイクロプラスチック問題が解決しない中、自然に還らないものを使うことは極力避けたいです。
開墾作業の終わった現在は、充電式のものを使っています。(*1)
近いうちに連結式・スプリット式のものに買い換え予定です。 (*2)
先端が交換できるので、2027年から本格的に取組む陸稲で役に立つと考えています。
刈払機とグラウンドトリマとして活用するつもりです。
バッテリーの電圧は汎用性の高い18Vで、十分活躍してくれています。
ちなみに1万円台の電気刈払機では役に立ちません。
スコップは金象印の剣先スコップを使っています。 (*3)
2. 危険物の撤去(草刈りと同時に)
以前の圃場管理者が設置して朽ちた柵を片付けている最中、木片に打ち付けられた錆びた釘を踏みました。
放棄地には草や土に埋もれた人工物が必ずあります。見つけたらまず拾うこと。見失うとまた見つけることは困難です。破傷風になったり化膿したりしては困ります。
子供を連れて行くなら、なおさらです。
ぼくは今でも常に不燃ゴミの袋を持ち歩いています。
3. 獣対策(草刈りが終わり次第、早々に)
耕作放棄地で作物を育てることは、獣の住処で田畑をするようなものです。
獣の気配が濃いなら、後回しにせずなるべく早く柵をつくりましょう。
柵で代表的なもの
・電気柵
・金網
・木製
・ネット
ぼくの場合、当初はネットを用いていました。漁業用の強靭な網を再利用したもので、鹿が絡まっても千切れないほどです。
しかし、草刈りがしにくく手間が増えたのでやめました。
その後は電気柵に乗り換え、かれこれ10年ほど使っています。
電気柵は物理的に防ぐのではなく、触れた痛みで“近づかない”を学習させる心理柵です。
物理柵から心理柵への変更で効果が心配でしたが問題ありませんでした。
ニュージーランドの企業gallagher社の製品を使用しています。 (*4)
金網は設置の手間とコストがかかり、木でDIYするのは広すぎて現実的ではない上に耐久性に疑問があるので選択肢から外しました。
本当は柵なんて作りたくはありません。柵が不要な地域があれば理想です。
自然農なのだから自然のままにしたいという気持ちもわかりますが、
せっかく手間暇かけたのに収穫できないのは辛いと思います。
ヒトと獣の住み分けは、地方の人口減と比例して難しくなっているのではないでしょうか。
4. 田んぼの整形
穂が実った理想の光景をイメージして形作っていきましょう。
思いっきり夢を描いてください。
ですが、ゼロから作るというより、元々の田んぼの形を思い描きそれを元に作っていくのが良いです。
少し高いところから全景を見渡しながら考えると良いと思います。
水の流れを確認します。どこから入ってきて、どこへ流れていくのか。
入り口と出口を確認したら、水が溜まるように枠=畦を作り直します。
最初のうちは、10m、20mの距離をスコップで真っ直ぐ掘るのは難しいので、
ロープや紐を張って目安にされると進めやすいです。
ロープに沿って剣先スコップを刺し、次にスコップ幅分の間を空けて平行にスコップを刺します。刺し跡に向かって左右の端にスコップを刺し込むと、ゴロッと土塊がとれます。
これを繰り返して掘り進みます。
できた土塊は畔の手直しや穴埋めに使います。
5. 畦の手直し
何年も放棄された土地には獣道が沢山あり、畦や石垣は崩れています。
崩れた畦は、散らばった石を戻して土を盛って修復します。
その後、畦塗りの要領で泥を塗ると良いでしょう。
泥は、水量の加減が難しいです。簡単にシャバシャバになるし、逆に水気が足らず練れないということも。これは回数を重ねて覚えるしかありません。
開墾時の失敗と対策
失敗: 初年度から規模を広げすぎた。
「上の棚田も使える」と連絡をもらい、ありがたく一画まるまる借りました。結果、初年度にして身の程知らずの広さになり、丁寧にすることよりも、とにかく終わらせなければと気がはやる日々になりました。
当時の日誌にはこう綴ってあります。
身の程知らずのバカが、
自然農をうたった、
命の軽視をしている。いつのまにやら足許から離れていたことを身をもって知ることとなった。
(母は大地 父は空「四十日目」2015年6月3日)
ぼくはこの年の反省から「うるち米ひとつ、もち米ひとつ。まずはこれをしっかり作る。1年分の収穫は結果であって、目的にはしない」と決めました。

章末コラム: 「放棄地」という言葉
草刈りや作業をしていると、色々と思うことがあります。
放棄地とよく言うけれど、
いたるところに鳥の巣がある
目に付きやすいので、気づく
止まっていたわけではなく、生命活動は続いている
単に人間が耕作を放棄した場所なだけであって、
その場は仮死になどなっておらず、続いている
(着土「二 開墾」2016年3月22日)
10年前の作業日誌にはそう書いていました。
人間の活動は止まっていたかもしれませんが、草や虫、菌に小動物などなど生命活動はずっと続いています。その営みにお邪魔するという気持ちを忘れたくありません。
また、田んぼ作りは、1年で終わる作業ではありません。
毎年の積み重ねです。
焦らず楽しんでいきましょう。
次回は「水——関係性の経糸と緯糸」。不活化していると思っていた水路が、生きていた話です。
道具リスト
1 刈払機 マキタ充電式草刈機 18V仕様 (PR)
2 スプリット式刈払機 マキタ スプリット式充電草刈機 18V仕様 (PR)
3 剣先スコップ 金象印 剣先スコップ/ (PR)
4 電気柵本体 Gallagher社 MBS100x (PR)
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